shashasha 写々者

15年後の完全版

ホンマタカシの代表作として高い評価を得ている『Tokyo and my Daughter』。完全版となる本書では、ホンマ自身の娘ではなく、友人の娘である少女を描いた優雅で親密なイメージの連続と、東京という都市とのつながりが明らかにされています。ある写真では、車の後部座席から不思議そうに顔を出し、また別の写真では、自分の小さなピンクのカメラを撮影者に向けています。ホンマの写真には、被写体を熟知しているとは思えないほどの温かさと誠実さがあり、東京の都市の風景を、少女を描くのと同じような優しさで記録しています。

ホンマタカシの写真には、カメラの前の物や人との距離感に潜む、特別なエネルギーがあると言われています。今回の写真集では、非常に個人的なテーマであるにもかかわらず、レンズを通して見たものを登録するという断絶した方法に妥協していないように見えます。一見すると、ホンマは娘を車や家や木と同じように、東京の都市景観の一部として認識しているのではないかと想像させられます。被写体である彼女はカメラに抵抗することもなく、カメラを誘惑しようとすることもなく、淡々と視線を返し、自分自身が観客になろうとさえしています。